夢のような恋だった

「別れたでしょ? あの時、そう言ったじゃない」

『意地をはるなよ、紗優。俺が振られるわけないんだ。紗優を悲しませたのはちゃんと反省してる。もうしない。紗優だけだ』

「意地なんか張ってない。もう草太くんのこと好きだって思えないの。だから別れてって言ったの」

『大丈夫。紗優はまた俺を好きになるよ』


なんなの?
話が全く通じない。
怖い、怖い。


「き、切るわよ?」

『今、本屋で酷いこと言われてるんだろ?』


何を言い出すの?

黙っていると草太くんが続ける。


『茂が言ってた。俺と別れたせいで従業員から色々言われてるって。
違うだろ? 茂が話すから本屋にまで話が広がるんじゃん。悪いのは茂だろ? 
だから茂のことは懲らしめておいたから』

「何言って……」

『他の奴らも俺がなんとかしてやるよ。だから心配せず俺のところに戻ってくればいい。悪い噂なんてすぐ消してやる』

「訳分からない。何言ってるの」

『今から行くよ。待ってて』


唐突に電話が切られる。

言っていることは訳が分からなかったし、声は切迫していていつもの草太くんとは違っていた。

それに“今から行く”って。

来るの? ここに?

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