夢のような恋だった
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冷房の効いた店内は快適だ。
アルバイト先の本屋はこの辺りでは大きめのチェーン店で、店舗内にカフェも併設されておりコーヒーの香ばしい匂いがしている。
今日の私はレジ担当。最近はバーコードが主流だから打ち間違えることはないけれど、ポイントカードの処理が面倒くさい。たまに操作ミスしてしまうとすごくパニックになってしまう。
「七百二十円になります」
お客さんが持ってきたのは私も好きな作家さんの新刊だ。社割で買おうかな。でも、新しいお仕事の構想も練らなきゃいけないから、本に夢中になっている暇もないか。
レジが閑散としたら棚の整理、注文書の確認。本屋って意外と忙しいし力仕事だ。
このお仕事を始めてから筋肉がついた気がする。
開いた棚に本を補充している私の上に影がかかる。
「いらっしゃいま……」
言いかけたところで止まってしまったのは、傍に立っていたのがスーツ姿の草太くんだったからだ。
「草太くん」
「紗優、ごめん」
「やめてよ。今仕事中だし。草太くんだってそうでしょ」
外回りの途中なのだろう。草太くんはスポーツ用品販売会社の営業をしている。
普段は軽装でいいらしいのだけど、大手の取引先に行くときはスーツなのだと聞いたことがある。
スーツ姿の男の人がエプロン姿の女に頭を下げている姿はとても違和感があって目出つ。