夢のような恋だった
「なんでこんなことになったの? ……別れたんじゃなかったの」
「別れたよ。一度はちゃんと分かったって言ってくれたのに」
消毒液が乾いたところで絆創膏を貼ってくれた。
「困ってるなら言えばいいのに」
「でもここまで酷くなったのは今日だし。ある程度は一人で何とか出来るよ。私だって大人だもの」
責め立てられてる感じがしたので、反論する。
彼は不機嫌さを隠しもせず私を見つめた。
「でもさ。一人で何とかしようとして何かあったらどうするんだよ。紗優なんて逃げ足も遅いのに」
うう。痛いところをつくなぁ。
「でも、私も悪いところあったし。元から悪い人じゃないもの」
「あからさまにおかしいじゃん」
「前はもっとドライな人だったの。どうしてこうなっちゃったのかわからないけど、多少なりともおかしくなったのが私のせいなら、責任あるかなって」
「だからって紗優に何が出来るんだよ。甘やかすな。突き放せ」
「もう、なんでそんなに怒るの」
立て続けにまくし立てられて、悲しくなって言い返す。
そうしたら、智くんが私の腕を強く掴んだ。
怒ったような、だけどどこか色気のある顔で見つめられて心臓がぎゅっと掴まれたようになる。
「好きだからだよ」
時間が一瞬止まった気がした。
カラン、とお茶の氷がタイミング良く一度鳴る。