夢のような恋だった
「今もまだ、紗優が好きだからだ」
継続を思わせるその言い方は、会えなかった六年間でいびつに曲がってしまった私の心にピタリと収まる。
私もそうだ。
今のあなたが好き、じゃなくて。
今もまだ好き。
昔からずっとずっと変わらずに智くんが好きだ。
「わ、わたし」
「別れてすぐは苛ついた。忘れようと必死になった時もある。でも誰とも付き合えなかった。俺が思う以上に、紗優は俺の中に染みこんでたんだ。それこそ小さい時から、まるで呪いでもかけられたように俺の頭の中は紗優ばっかりだ」
目を伏せた智くんに、心臓がドキドキしすぎておかしくなる。
「だから、もう一度俺と……」
「私だってそうだよ」
彼の声を遮るように告げた。
「智くんが好きなの。別れてからずっと一人で、寂しくて草太くんと付き合った。でも、智くんと再会したら彼とはもう付き合えなくなった。私の頭の中智くんで一杯で、草太くんが好きだなんて思えなくなった」
「紗優」
「だから、草太くんにも悪いコトしたって思ってる」
「いいよ。たぶんあの男、他の女に同じようなこと沢山してる」
「でも」
「いいから」
智くんの人指し指が、私の唇の中央で止まる。
「いま他の男のことなんかどうでもいい」
その指が、唇をなぞるように動いた。