夢のような恋だった
「ゴメン。痛い?」
「大丈夫」
苦しかったけど、離さないで欲しかった。
「……離れないで」
頭を彼の胸に預けると、智くんは一瞬体をびくつかせ、手のひらで自分を仰ぎ始めた。
「ヤバイ。理性が飛びそう」
テーブルに出しっぱなしになっていたお茶を一気に飲む。
既に氷は溶けていて、グラスがあった場所は水滴でいっぱいだ。
理性なんて、私はもう飛んでる。
智くんが来てくれた瞬間から、もう溢れだしそうな気持ちを制御出来ない。
声に出したら、それこそ智くんに引かれるかもしれないくらい。
私の心に触れて、温かく包み込んでくれるのはいつも智くん。
一緒に居て。
心と同じように体の隅々まで、触れて優しく包み込んで。
膝立ちになって、自分からキスをした。
少し離れて顔を見ると、智くんが口を抑えて真っ赤になっている。
「紗優」
「智くん、帰らなきゃダメなの?」
「え?」
私からのキスは初めてだ。
高校の時は恥ずかしいのが先立って、いつだって受け身でいたけれど。
「大丈夫なら、一緒にいて」
もう子供じゃない。
ここまで近づいてきてくれた智くんに、私も与えられるだけのものをあげたい。