夢のような恋だった
「だってこうでもしないと捕まらないだろう。電話かけてもでてくれなかったじゃないか」
「分かったから、とにかく頭をあげて。仕事終わったら連絡するから」
「約束だぞ」
草太くんは顔を上げ、念を押すように私を見つめて店を出て行く。
案外と頑固な私のことを、彼は案外分かっているようだ。
ケンカ別れをした後は電話にも出ないし家にもいれない。
だからこそこうして職場に来たのだろう。
ため息をついて仕事に戻る。
……せっかく新しい仕事の話で意気揚々としていたのに、なんだかすっかり落ち込んでしまった。
その後も淡々と仕事を続けていると、夕方、茂くんがやってくる。
茂くんも草太くんと同じ職種で、彼は今日は外回りは大したことなかったのかシャツにスラックスという軽装だ。
「紗優ちゃん、草太と喧嘩した?」
レジカウンターにもたれて、笑いながらそう言う。
草太が女の子お持ち帰りしたんだって、って言った時もこんな顔してた。
「したよ。あんなこと言われてしないほうがおかしいでしょ?」
「別れないの?」
「まだ交渉中。ね、お客さん来るからよけてよ」
「別れたらさ、俺に連絡くれない?」
「どうして?」
「知ってる癖に」
謎掛けを仕掛けるように笑う。
知らないよ。
茂くんは私には何もはっきり言ってないじゃない。