夢のような恋だった

不意に彼は自嘲したように笑った。


「ゴメン。俺重いよな。かなりヤバイ部類に入りそう」

「ううん。私、嬉しいよ。だって好きな人からだもん」


ずっと私の事忘れないでいてくれたんだとしたら、私は嬉しい。


「……って、今何時?」

「えっとね。七時。智くん、お仕事は大丈夫?」

「ああ。あーそういえば昨日放って来ちゃったんだった」


いきなり落ち込みだすから心配でじっと見ていると、智くんは半身を起こしてちらりと私を見る。


「紗優は、これからどうするんだ?」

「どうって。……今日は昼からバイト。空いた時間で創作活動」

「夜は? 実家帰る?」

「どうして?」


なぜいきなり実家の話が出たのか分からず首をかしげる。


「俺、たぶん今日は夜遅くなるし。危ないから」

「遅くならない日は来てくれるの?」

「少なくとも、アイツのことがちゃんと落ち着くまでは心配だ」


智くんは憮然とした顔で言うけど、私はなんだかもう開き直っていた。

大嫌い、って言ったし。

サイちゃんが釘を指してくれたから、きっともう大丈夫だろう。

それに、今ならもう強気で来られても揺らがない自信がある。


< 174 / 306 >

この作品をシェア

pagetop