夢のような恋だった

その後もレジ前で作業していたら、仕事終わり間際に茂くんがやってきた。

足を軽く引きずっていて、すぐに中牧さんが近寄って、「大丈夫か?」なんて話かける。
同級生だったって言っていたけれど、本当に仲がいいんだなぁ。

私はそれを横目で見ながら、そろそろ抜けてもいいかと周りの人に挨拶をしてレジから抜ける。


「待って、紗優ちゃん」


事務所へ向かう途中に、茂くんは私に声をかけてきた。


「茂くん。久しぶり」

「話があるんだ」


私はもう茂くんと話すことなんて無い。
……けど、隣に立っている中牧さんの視線が値踏みしているようでNOとはいえなかった。

中牧さんは私の何がそんなに嫌なんだろう。
私が、茂くんとか草太くんを振り回しているように見えるのかな。

帰り支度をしてから行くと告げ、一度事務所に戻る。
エプロンを外しタイムカードを押してまた出ると、茂くんが壁に寄りかかって待っていた。


「ごめんね。待たせて。……あの、話って」

「うん。歩きながら話そうか」


促されて、先を歩く茂くんに付いて行く。

でも、そういえば彼は捻挫したとか言っていたような気がするんだけど。


「茂くん、捻挫はもういいの?」

「うん。少し痛いけど歩けるしね……誰にきいた?」

「中牧さんに」

「なんで怪我したか聞いた?」

「あ、……うん」


草太くんと言い合いになったとか何とか。
そういえば、草太くんとは仲直りしたのかしら。

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