夢のような恋だった

店を出て、歩いて行く茂くんに付いて行くけど、どんどん表通りから外れていくことが気になる。
怪我をしてる人がわざわざこんな人気のないところに向かうのはなぜ?


「あの、茂くん? 話なら早くしてくれないかな」

「もうちょっと。こっちだよ」


なんだか嫌な予感がして、「じゃあちょっと電話させて」とサイちゃんの携帯に繋ぐ。


『もしもし? あれ、ねーちゃん?』

「あ、サイちゃん? 私だけど、ちょっと遅くなりそうなのごめんね?」

『なんのこと?』

「約束してたでしょ? 夕飯おごるって。もう少し待ってて。……うん、今本屋の近くだから。そう、ラーメン屋さんじゃない方に向かってる。また連絡するね」

『は? ねーちゃ……』


訳の分かってなさそうなサイちゃんに、とりあえず居場所が伝わるようなワードを残して切る。
もしこれで何かあってもサイちゃんだけは場所に気づいてくれるはず。


「誰かと約束してたの?」

「うん。弟と」

「じゃあ手早く話を済ませないとね」


そう言った瞬間、茂くんが私を路地の隙間に引っ張った。

お店のダンボールやポリタンクが積まれた一角で、表通りから完全に陰になっている。
空気もひんやりしていて、体がぞっとする。

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