夢のような恋だった
「悪いけど、仕事が忙しいの。しばらく誰とも会わずに仕事に没頭するつもり」
「紗優ちゃん」
「帰ってよ、茂くん」
はっきり言うと、茂くんは「今度電話する」といい、すごすごと引き下がった。
草太くんと茂くんは仲がいいけど入社以来のライバルで、何かにつけて競い合っているらしい。
私に先に声をかけてきたのは茂くんで、先に私の心に入ってきたのが草太くんだ。
彼ら二人が私にこだわるのは、
二人の関係性も後押ししてるからなのかも知れない。
「……メーワク。競うなら二人で勝手にすればいいのに」
ため息がこぼれ出る。
新しい仕事のことを考えたいのに、草太くんと揉めちゃったらどんどん時間がなくなってしまう。
バイト時間を終え時計を見ると、二十時を十五分ほど回ったところだった。
いつも思うけど、一人だと食事が億劫になる。食べなければバテるのは知っているけれど、自分の為に頑張るというのは案外難しいものだ。
「草太くんに電話……しなきゃなぁ」
これも億劫だ。また言い訳されると思ったら気が滅入る。
草太くんと出会ったきっかけは、このバイト先だ。
正社員の中牧さんと茂くんが昔の同級生で、働いている私を店内で見かけて気に入ってくれたらしい茂くんが、合コンの話を持ってきたのが始まり。