夢のような恋だった

「紗優、逃げんなよ」

草太くんが叫ぶ。

私は必死に足を前に前にと出した。
でも、道の端に積まれていたダンボールにぶつかって、一つ倒したと同時に草太くんに腕を捕まえられる。

逆向きに引っ張られて、アスファルトに投げつけられた。
咄嗟についた手が擦れて痛い。


「せっかく譲ってやるっていってるのによ。まあいい。とにかく紗優が大人しく言うこと聞くような写真が撮れればいいんだ」


草太くんはにやりと笑うと、私の膝の上に乗って服の襟に指をかけた。


「やめてよ」

「だって俺とのキスシーンなんか脅しにならないだろ。元カレなんだし。だったら恥ずかしい写真でも撮るしか無いじゃん」

「やめて!」


鳴り続ける私の携帯は、一度留守録になったのか音が止まり、再び鳴り出す。
草太くんは眉を寄せ、私から鞄を奪い茂くんの方に投げた。


「うるせぇな。電源切れよ、人が来る。茂、見張ってろよ」

「草太。でも」

「すぐ終わるよ」


出来る限りの力で抵抗しようとしたけれど、彼を押し返そうとした時に手首を捕まれ、彼の左手に両手首とも抑えられてしまった。


「素直に消すって言わないから悪いんだ」


シャツをめくり上げながら、あくまでも悪いのは私だと言い続ける草太くんに、もうおぞましさしか感じなかった。
悔しさで泣きたくなるけれど、泣くのは負けたようで嫌で、必死に彼を睨みつける。

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