夢のような恋だった
「別にってことないだろ。ヒントになるかもしれないんだし」
「普通に話して、ちょっと喧嘩しただけ」
壱瑳くんの黒目がちな瞳が終始落ち着さげに左右に動くのが気になる。
壱瑳くんが好きだって、私にだけ教えてくれた琉依ちゃん。
もし、彼女がその気持を抑えきれなくなったら。
そうしたら彼女はどうするだろう。
「ご、ごめんなさい。お手洗い借りてもいいですか?」
「え?」
私の声に、智くんもおばさんも素っ頓狂な声で私を見る。
「ああ。どうぞ、智、案内してあげて」
「ううん。智くんたちは琉依ちゃんのこと考えてて。……壱瑳くん、教えてくれるかな。トイレの場所」
「え? ……うん」
壱瑳くんは最初キョトンとした顔で私を見たけれど。
私の意図に気づいたのか、智くんを押しのけるようにして私のところに来た。
「……こっちです」
「うん」
リビングをでて、トイレの前まで行くと壱瑳くんは私に囁いた。
「紗優さん、なんか知ってる?」
「琉依ちゃんの気持ち、私は聞いたことあるの。……その、もし違ったら申し訳ないからハッキリは言えないんだけど」