夢のような恋だった

もし違った場合に、私が琉依ちゃんの気持ちをばらすわけにはいかないので、曖昧に言ってみたけれど、壱瑳くんにはわかったようだ。

ため息を付いて、ボソリと告げる。


「……俺、なんて答えたらいいか分からなかった」

「壱瑳くん」

「俺だって琉依が好きだよ。家族だし。家族の中でも琉依が一番好きだ。……でも、恋愛とは違う。だから、……初めて琉依を突き放した」


いつも無表情な壱瑳くん。今も表情は変わらないけれど、凄く悲しそうな声にこっちまで悲しくなる。


「俺どうすれば良かったのかな」


途方にくれたように私を見る。

なんとなくわかった。
心細いのは、壱瑳くんも一緒なんだ。

ずっと一緒で二人で補いながら生きてきて。
今いきなり一人になって困ってる。


「……大丈夫。間違ってないよ、壱瑳くん」

「紗優さん」

「壱瑳くんは姉弟として琉依ちゃんが好きなんでしょ。そのままでいいよ。好きなままでいて」


見上げるようにして言うと、壱瑳くんの手が伸びてきて、私のカーディガンの裾を握った。


「……分かった」

「なにが?」

「琉依、きっと紗優さんの部屋に行ったんだ」

「え?」


でも昨日は来なかったけど。じゃあ朝方に家から出たってことなのかな。

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