夢のような恋だった
「昨日にーちゃん泊まったんでしょ? さすがにそれを邪魔するほど野暮じゃないから、朝に行こうとしたんだと思う」
「そっか。私達、今日は朝から出かけちゃったから」
「たぶん部屋の前で待ってる。……俺、行ってくる」
「待って。私も行くわ」
一番最初に琉依ちゃんが私のところに来た時も、そういえばそうだった。
六年も会ってなかったのに、私にしか言えないって。
琉依ちゃんはいつも好き勝手やっているようだけど、本当は人から拒絶されるのを恐れてる。
だから一歩離れたところにいる私を選んだんだ。
結局トイレになんか入らず、私たちはリビングに戻った。
「智くん、私アパートに戻るね。もしかしたら琉依ちゃんが来てるかも知れない」
「俺も行ってくる」
私が鞄を掴み、壱瑳くんが言うが早いか玄関に向かうと、智くんは慌てたような素っ頓狂な声で追いかけてくる。
「は? ちょっと待てって。だったら俺も行くよ」
脱いだスーツを上に引っ掛けて走りだす智くんにおばさんが声をかける。
「智、どういうことなの。説明して」
「俺も分からない。でも、もしかしたら紗優のアパートにいるのかもって」
「は? どうして?」
おばさんはそれこそ驚いたように、駆け寄ってきて私をじっと見つめた。
「どういうこと? 紗優ちゃんなにか知ってるの?」