夢のような恋だった
よどみなく私のアパートへの道筋を説明する智くんにおばさんは冷たい口調で言った。
「ふうん。行き方覚えるくらいには通いつめてるんだ。最近の外泊はみんなここに行ってるのね」
「母さん!」
「なによ。別に文句を言っているわけじゃないわ。大人で同意ならガタガタ言いたくはないのよ。……でも、アンタはのめり込むから心配なのよ」
おばさんとバックミラー越しに目が合ってドキッとしてしまう。
信用されてないのかなって思うけど、おばさんが心配しているのは、かつて私が智くんを振ったっていう過去があるからだろう。
「おばさん」
「なに? 紗優ちゃん」
「信用してくださいって言っても無理かもしれないけど。私、もう二度と智くんを傷つけるようなことしません」
ぎょっとしたように智くんが私を振り向き、壱瑳くんは一瞬手を止めて無言で微笑んだ。
「……あら、そう」
おばさんはそう言ったかと思うと勢い良くハンドルを切った。
よろめいてバランスを崩した私は、隣に座っていた壱瑳くんにより掛かる形になる。
「あっこら、壱瑳」
「大丈夫? 紗優さん」
「うん。ごめん」
壱瑳くんに支えてもらっていると、振り向いてこっちを睨んでいる智くんの顔が見えて怖い。
「智、前向きなさい。……全く余裕のない子ね」
おばさんは鼻で笑うと、バックミラー越しに挑戦的に私を見つめた。
「よく言ったわ。その言葉に偽りなしか、じっくり見させてもらう」
「はい」