夢のような恋だった

大丈夫。
私はもう迷わない。

今度もし智くんと離れる事があるとすれば、それは彼が私を要らないって言った時だけだ。


「……母さん、ここ右。それから、紗優に余計なこと言うなよ」

「余計じゃないわよ」


今度は智くんがバックミラー越しに私を見る。
私が笑い返すと、壱瑳くんがおもむろに顔を上げる。


「彩治も今駅についたから向かうって」

「え? サイちゃん?」

「ずっとLINEで彩治には状況伝えてた。部活終了後ダッシュで向かってるって」

「そうなんだ」


さっきメールしてたのもそれなのかな。壱瑳くんと琉依ちゃんとサイちゃん、三人で仲良しなんだもんね。


「紗優さん」

「ん?」

「俺、琉依になんて言ったらいいかな」


心細そうに見つめられたから、私は彼に笑いかけた。


「いつもと同じで大丈夫。迎えに来たって言えばいいよ」

「うん」

「琉依ちゃんだってちゃんと解ってるはず」


そう。
きっと琉依ちゃんは分かっているんだ。

最初から、『壱瑳とはまごうことなき双子』って言ってた。
ただ感情がまだ整理できなくて、戸惑っているだけ。

私は双子じゃないから本当のところはよくわからないけど、
生まれた時からずっと一緒にいて、ほぼすべての時間を共有していたら愛情の加減が分からなくなっていくのもあり得ることだと思う。

離れていて、実感出来る気持ちもあれば、近くにいすぎて分からなくなる感情もある。

家族愛と恋愛感情が混ざってしまった琉依ちゃんは、行き場がなくなって苦しくて。
きっとそれを整理したいだけなんだ。

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