夢のような恋だった
肩を落としてうつむく琉依ちゃんに私が近寄った瞬間、下から大きな声が聞こえた。
「琉依! いるのか」
「サイちゃん?」
まさかのサイちゃんの声だ。
ちょっと待ってよ、せっかく話始めたところなのに。
下を見ると、先の道路からサイちゃんともう一人、男の子が走ってくる。
琉依ちゃんは二人を見てギョッとした顔をしたかと思うと、「紗優ねえちゃん、鍵開けて。入れて!」と私をせっつく。
「えっ、でも」
「会いたくないの。アイツにだけは?」
「どうして? サイちゃんなんかしたの?」
「彩治じゃないよ。西崎の方」
言われて鍵を回しながら、確かにサイちゃんと一緒に走ってくるのは達雄おじさんちの絆くんだってことに気づいた。
そういえば、琉依ちゃんとはクラスが同じって言ってたっけ。
今一緒にいるってことはサイちゃんとは部活が一緒だったのかな。
「琉依!」
「ちょっと待て、彩治」
大きなサイちゃんの声。
それを止めるのは智くんの声だ。
サイちゃんが地上で引き止められている間に、琉依ちゃんは私の部屋へと滑りこみ、私の腕も引っ張った。
すごい勢いで引っ張り込まれて、足元をふらつかせながら何とか体勢を整えると、ちょうど琉依ちゃんが鍵をかけたところだった。