夢のような恋だった
15

 結局、私の狭い部屋に全員に入ってもらうことになった。
おばさんは遠慮しようとしたけれど、せっかくここまで来たんだから入ってもらう。

「お茶入れるね」と立ち上がると、「一人じゃ大変よ」とおばさんが一緒についてきてくれた。

部屋では、琉依ちゃんと壱瑳くんが気まずそうに座っていて、絆くんとサイちゃんも顔を見合わせては逸らしている。

間に入る智くんは大変そう。
ちょっとした冗談を言っては、冷たい視線を向けられている。


「……ごめんなさいね、迷惑かけて」


おばさんが、小さな食器棚を見ながら呟く。
そういえば、一人暮らしの私の部屋にはマグカップも四つしかない。
どうしよう。足りないや。


「いえ。いいんです。でもカップが足りなかったですね。すみません」

「一人暮らしだものこんなものでしょう。このお茶碗とかでいいじゃない。深さもあるし。私と智と紗優ちゃんがお茶碗でいい?」

「あ、でも、おばさんはお客さんだし。私とサイちゃんと、……智くんに我慢してもらいます」


言ってから、しまったかなとチラリとおばさんを見上げる。

でも、おばさんは気にした感じはない。
じっとお茶碗を見つめて、フッと笑った。


「智はお客さんじゃないのね?」

「……はい。もう違う……と思います」

「じゃあ、私もお客さんじゃなくていいわ。彩治くんにちゃんとマグカップであげなさい。高校生の中で一人だけのけものなんて可哀相よ」

「あ、ありがとうございます」


< 226 / 306 >

この作品をシェア

pagetop