夢のような恋だった
こちらの空気を感じ取った高校生組は、わざとらしいくらいのため息をこぼした。
「あーお兄ちゃんばっかり幸せそうでムカつく」
じっとりと睨むように見つめてくるのは琉依ちゃんだ。
「琉依はその前に反省しなさい。皆心配したのよ」
「はぁい」
おばさんに言い込められて、琉依ちゃんは不貞腐れたように俯いた。
どうやら同級生三人とは顔を合わせづらいらしい。
「とりあえず、心配かけてごめんなさい。……でも彩治や西崎にまで知れ渡ってるのはなんで?」
「彩治のところに電話かかってきたから。今日部活だったんだよ」
答えたのは絆くんだ。
「それにしたって。彩治はともかく西崎は来なくても」
「一応クラスメートだから来てみただけだ」
「ウッソだ。どうせ馬鹿にするつもりで来たんでしょ」
「ちげーよ。イマドキ家出とかする奴の顔、珍しいから拝みてぇなって思っただけだ」
「ムカつく、アンタ」
琉依ちゃんと絆くんが会話するところって初めてじっくり見たけど、凄くテンポがいい。
まあ、会話の内容はちょっと怖いけれど。
「まあまあ。とにかく琉依も見つかって良かったよ」
「うん」
慣れた感じで割って入るのはサイちゃん。
そっぽを向く二人より先に返事をしたのは壱瑳くんだ。
彼の声に、琉依ちゃんが反応してまた黙る。