夢のような恋だった
でもどうして? と智くんと顔を見合わせると、おばさんは不敵に笑った。
「ちゃんと卓に……智の父親にも挨拶してあげてくれないかしら。一応、全ての最終決定権はあの人がもってるの。家では」
「よく言うよ。たいていは事後報告の癖に」
智くんはそう言ったけれど。
私は素敵だなって思えた。
智くんのお父さんと話したことは殆どないけれど、きっと二人はとても信頼しあっているんだ。
だからおばさんは一人でも突っ走る。だけど最後はちゃんと分かち合う。
私も、智くんとそんな関係になりたい。
勝手に彼の為だなんて決めつけて、私の結果を押し付けるんじゃなくて。
彼の気持ちと合わせて、一番の結果を見つけられるようになりたい。
過去の自分に後悔はない。
だけど、それは酷く一人よがりで寂しいものだった。
私は彼と一緒に居たのに、彼とともに生きる術を見つけられなかった。
もう一度会えたのは奇跡だ。
もう間違えない。
これからどんなに迷う日が来ても、一緒に生きる道を選ぶことを諦めない。
「行きます。おじさんにも挨拶させてください」
「じゃあ、車回すわよ」
「あーいいねいいね。それで私の家出騒ぎもうやむやにならないかな」
「それは私がさせないわ。後でじっくり説教よ、琉依」
琉依ちゃんの明るい声は、おばさんによって一蹴される。
壱瑳くんが小さくプッと吹き出して、智くんが釣られるように笑い出す。
「酷い、二人共」
拗ねた顔をした琉依ちゃんは私にしがみつくから、私は彼女を抱きしめ返した。
「後で慰めてあげるから、しっかり怒られておいでよ」
「紗優ねえちゃん、それ助けになってない」
私はこの家族が大好きだ。
甘え方も、泣き方も、素直になる方法も、みんなに教えてもらった。