夢のような恋だった
16
智くんのご両親にもご挨拶を終えた私達は、本格的に引っ越しについて考え始めた。
お父さんが幾つか候補を出してくれたけれど、私達には全体的に家賃が高めで。
幾つか不動産を歩きまわって、近くのもう少し値段の安いアパートを選んだ。
築年数は経っているけれど、リビングの他に小さな部屋が二つある。
作りはしっかりしていて内装のリフォームを自分たちでしてもいいというのが気に入った。
このアパートに決めるときに、智くんはお父さんに挨拶に行った。
「せっかく色々探してくれたのにすみません」
「いや。住むのは二人だから。二人が満足すればそれでいいよ。家からも近いし」
「紗優に……贅沢はさせてあげられそうにありません」
申し訳無さそうに呟く智くんを見て、お父さんはポンと肩を叩いて和室に呼び寄せる。
私もついていこうとしたら「紗優はそっちで待ってろ」と言われてちょっと不満。
何を話すのか、私だって気になるのにな。
仕方なくリビングから遠巻きに様子を伺う。
ふすまの陰から、お父さんが仏壇を開けて智くんにパパの遺影を見せるのが分かった。
お父さんが自分から仏壇を開けることはあまりないからなんだかドキドキしてしまう。