夢のような恋だった

彼に自信を無くさせたのは、他でもない昔の私だ。
ずっと一緒にいようとしてくれた彼を、自分から手放した。

そんな不安を、お父さんは笑って一蹴する。


「出来るだろ。今までもしてきたんだ。……紗優を頼むよ、智くん」

「……はい！」


聞こえてくる会話に目頭が熱くなって、私は後ろを向いて呼吸を整えた。
そうしたら、お母さんが目元を抑えている場面と出くわした。
お母さんは気恥ずかしげに笑う。


「お母さん」

「やあね。英治くんたら格好つけちゃって」

「お父さんは格好良いもん」


ホントだよ。
だからお父さんがお父さんになってくれた時、とても嬉しかった。

頭ごなしに子供だからって言い方をしないで、私の目線に立って考えてくれた。

それは今も同じ。
智くんを認めてくれる。

私がどれだけ彼に救われているか、お父さんが分かってくれていることがとても嬉しい。


「あんなこと言っておいて、実際に結婚するときはぐずるかも知れないわ。紗優、実力行使もありかもよ」


存外物騒なことを言うお母さんに、私の目尻に乗った涙も乾いていく。

私は幸せだ。
皆に愛してもらって今ここに立てている。