夢のような恋だった


 そして、部屋を契約してから一ヶ月は、リフォーム作業に没頭した。
大家さんは気のいい人で、リフォームにかかるであろう一ヶ月間の家賃を半額にしてくれた。

 お互い忙しいけれど、空いた時間を使っての作業だ。
壁紙の上から塗れるという塗料を買って、仕事場になる部屋を塗った。淡いパステルブルーに白い雲。まるで空の中にいるように。

作業をしながら、智くんがポツリと呟く。


「ところで、あのシナリオって最後はどうなるんだ?」


私と彼を引きあわせてくれたお仕事のことだ。

シナリオの最後のところは、残りエピローグを書いて終了というところまでできている。


「まだ山形さんからオッケー出てないから変更もあるかも知れないけど」


と前置きして、私はペンキを塗りながら彼に話す。





――――色々なおとぎ話の世界を回る内に、彼は【キラ】が与えた勇気だけじゃなくて、自らの知恵や力を手に入れていく。

やがて自分の力でなんでも出来ると過信した彼は、キラの助言をうるさく感じるようになり、喧嘩別れしてしまう。


そして少年は、たった一人最後の世界へたどり着く。

それは彼女がいる世界だった。


彼女もまた、彼の記憶をなくしていて、二人は初めて出会ったかのように対面した。



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