夢のような恋だった

二人は力を合わせて、行き先に立ちはだかる困難と向き合っていく。

大きな川を越える橋を作るため、ビーバーたちのすみかにむかい、彼らの願いを叶えるために奮闘したり。
足に刺がささった大男の刺を抜くために、森のクマたちを探してきたり。

彼女のドレスはボロボロになり、少年の体も傷だらけになった。
それでも、二人でなら頑張れた。


最後にたどり着いたのは大きな木。

根本に空いた穴の中に、キラとダンが寄り添って眠っていた。

二人は同時に二匹に手を伸ばす。
と、二匹は光輝き、キラは少女の中に、ダンは少年の中へと戻っていった。


その瞬間、記憶が蘇る。

幼なじみの二人。

お父さんの転勤で遠くに行く彼女。

別れが嫌で泣く少年。


心配な彼女は彼に力をあげたいと強く願った。


そして気がついたら二人はこの世界に居た。

彼には彼女から、“希望”を。
彼女には彼から、“優しさ”を分けあって。


全てが揃ったエネルギーで二人は元の世界へと戻ってきたのだ。


気がついた時、二人は部屋で眠っていた。

目が冷めて、夢だったのかと話しながら、お互いの話が合致することに衝撃を感じる。


「戻って来ちゃったね」

「明日、本当に行っちゃうの?」

「うん。だって。……仕方ないよ」


少女も、少年も泣いた。
でも泣いた後に残ったのはもう寂しさだけじゃなかった。


「離れても大丈夫だよ」


そう言って泣き笑いになった彼女に、少年は告げる。


「いつか絶対会いに行くから。大丈夫」

「うん」


そうして彼は新たな冒険にでる。

今度は、現実世界の長い長い冒険だ――――



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