夢のような恋だった

 駐車を終えたお父さんを待って、一緒にエレベーターに乗る。
背の高いお父さんは、未だに私の頭ひとつ分くらいは高い。

目尻のシワは増えたけれど、未だに格好いい部類には入るだろう。

お母さんは面食いだよなぁなんて思う。
パパもお父さんも、格好いいもん。

子供の頃の私は、無邪気に格好良くて大きなお父さんに懐いたけれど、お母さんはどんな気持ちだったんだろう。

パパが死んでからもずっと、仏壇に話しかけていたのを覚えている。
子供心に、ママはパパが大好きなんだって思って、“新しいパパが欲しい”なんて言い出せなかった。

寂しくて、でも寂しいって言い出せなかったあの頃。
いつの間にかお父さんが、私の気持ちに寄り添ってくれてた。



「ただいま」


先にお父さんが扉を開ける。

バタバタと玄関に出てきてくれたのは弟のサイちゃんこと彩治くんだ。お父さんに似た柔らかい茶色の髪。お母さんに似た涼し気な目元。私とは片方しか血が繋がっていないけど、今年高校に入学したばかりの八歳年下の大事な弟。

やだ、しばらく見ないうちに背が大きくなっている。


「ねーちゃん。お帰り」

「こら、彩治。ご飯の途中で立たないの」


キッチンからお母さんの声がする。

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