夢のような恋だった
仕事に出る智くんと一緒に部屋を出て、バイト先の本屋に向かう。
店に並んでいるのを見るのは今日が初めてだから気持ちが落ち着かないや。
「おはようございます」
早く見てみたい気もするけど、他の店員さんの視線もあるし。
どうしよう、とりあえずは鞄を事務所に置いてこようか。
「おはよう、葉山さん」
入ってすぐ声をかけてきたのは中牧さんだ。
「あ、おはようございます」
「悪いけど早くレジ入ってくれる?」
「はい」
忙しいのかしら。
私は急いで事務所に入り、タイムカードを押して、エプロンをつけて店に出る。
レジから見える位置にある、先日までテレビドラマ原作フェアが開かれていたコーナーが変わっている。
地元作家応援コーナーと名付けられたそこの一角に、昨日発売の私の絵本が置かれその脇にPOPが付けられていた。
【運命の人はいるよ――夢を語れない子供に、夢を忘れてしまった大人に、ぜひ読んで欲しい絵本です】
あっけにとられてそれを見ていると、児童書担当の人が近寄ってきて微笑んだ。
「発売おめでとう」
「……POP、書いてくれたんですか?」