夢のような恋だった



 そして時は飛ぶように流れて、八月。
智くんと再会してから、一年が過ぎようとしていた。


「カンパーイ」


グラスを鳴らして一気に飲み干すのは山形さん。


「今回はお世話になりました。これからもまたこういった企画ができたらいいなと思ってます」


挨拶をするのは、ゲーム会社の高柳さん。

公式サイト『絵本の森へようこそ』がオープンして一ヶ月。
遅ればせながら皆で打ち上げしましょう、と計画されたものだ。

私が書いたシナリオは、智くんや他の沢山の人の手を経て、ひとつのWebゲームとして出来上がった。
もちろん、中牧先生や一ノ瀬先生のシナリオもだ。

一番人気はやっぱり人気作家である中地先生がシナリオ担当したきつねの錬金術士の物語だ。


「とにかくアイテム精製が楽しんですよ。ついつい変なもの作っちゃう」


ゲーム化をメインで担当したという幾田さんが楽しそうに笑う。
最初に智くんに再会した時とは打って変わって、私はすっかりリラックスしてこの会に臨んでいた。

製作中に私達シナリオ担当とゲーム製作者はそれほど顔を合わせることは無かったのだけど、一つのものを一緒につくり上げるという行為は謎の連帯感を生むらしく、会えば妙に意気投合して盛り上がるのが面白いところだ。

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