夢のような恋だった
お酒も進んでほろ酔い気分になった頃、お店の人が何故かケーキを持ってきて私の前に置く。
「え? どうして……」
確かに私の誕生日は今月頭だったけど、なんで知ってるの? と思ってキョロキョロすると、もう一人のシナリオ担当者だった一ノ瀬さんが私に近づいてくる。後ろ手に何かを持っているように背中で手を合わせている。
「じゃじゃーん。葉山さん、おめでとうございます」
差し出されたのは大きな花束で、その豪華さに私は目をパチクリさせる。
「智から聞きました。もうすぐ結婚するそうで。式は身内だけなんて勿体無い。呼んでくれたらいいのに」
そう笑うのは幾田さん。
あ、そっちか。
だったらこの豪華さも分かる。
「やりましたね。本当に恋に発展しちゃうなんてびっくりです」
小声で私にささやくのは一ノ瀬さんだ。
中地先生がガハハと笑いながら智くんを引っ張る。
「その話聞いて、打ち上げと一緒にお祝いしましょうって言ったのよー。だってきっとこの仕事が縁だったんでしょ? ほれほれ、並んだ並んだ、新郎新婦」
押し出されるように智くんが私の隣に来る。肩が触れるくらいの距離で並んだ私達に、皆の注目が集まる。
「おめでとう。中津川さん、葉山さん」
広がる光景の中には、見渡すかぎりの笑顔。
恥ずかしいのと嬉しいのがごっちゃになって、熱くなった顔をおさえた。