夢のような恋だった

「サイちゃん、どうしたの急に大きくなって」

サイちゃんは中学時代伸び悩んでいて、クラスの女の子にも負けてるってよく言ってた。

それがどう? この数ヶ月でぐんと伸びたみたい。
まだお父さんには及ばないけど、私より十センチは大きい。


「この間まで同じくらいだったよね」

「そう。ついに来たー。俺の時代が!」


身長が伸びただけで時代は変わらないだろうって思うけど、元々顔の作りは悪くないので、格好良さは二割増しくらいには見える。


「良かったね、サイちゃん」

「おう!」


サイちゃんがもし今までモテなかったのだとすれば、その素直過ぎる性格のせいじゃないかな。

見た目から想像するようなクールさがあれば、もうちょっとキャーキャー騒がれるんじゃないかと思う。

簡単に浮かれてしまったサイちゃんの背中を押すようにして中に入って行くと、お母さんが私を見て苦笑した。


「お帰り、紗優」

「……ただいま」


なんか、色々なことを見透かされているみたいで居心地悪い。

何も悪いことなどしていないはずなのに、どうしてこんな気持ちになるんだろう。
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