夢のような恋だった
彼が浴室へと向かうのと同時に、玄関のベルが鳴った。
「あれ? 誰だろ。はーい」
「新聞勧誘かもよ。俺が出て断ってやる」
そう言って、勢い良く扉を開いた彼はそのままの格好で固まった。
「やほー。お兄ちゃん、紗優ねえちゃん、遊びに来たよー!」
「る、琉依ちゃん!」
琉依ちゃんは紙袋を見せてごきげんだ。
「お母さんが、これ持ってけって。昨日、おばあちゃんち行ったらさ、お菓子を山のように持たされてさー。おまんじゅうだよー」
「おまっ、俺は甘いモノは苦手……てか、今帰ってきたばっかりで」
「そうなの? 朝帰り? いやー、お兄ちゃんって最低!」
「そうじゃない!」
怒りだした智を尻目に、琉依ちゃんはずんずん中に入ってくる。
「今日壱瑳バイトで居ないんだよ。お兄ちゃん今帰ってきたなら寝るんでしょ? 紗優ねえちゃん遊びに行こうよ」
「え? あ、う、うん」
「……くっ。ああもう、俺は風呂入って寝る!」
完全に雰囲気を壊された智は不貞腐れたようにお風呂に行っちゃったけれど、私達のキューピットとも言える琉依ちゃんをないがしろには出来ません。
中津川紗優、二十五歳。
今日は可愛い義妹と、ゆっくり語り合おうと思います。
【Fin.】