夢のような恋だった
「まあでも今日は紗優のリクエストを聞くわ。何がいい?」
「うーん。ハンバーグ? お母さんの得意料理といえばこれじゃない?」
「そうね。ご名答。じゃあ買い物行きましょうか」
結局、お母さんと私で買い物に行き、サイちゃんがご飯を炊いていてくれることになった。
「でもサイちゃんの話はびっくり」
「紗優が良い見本だったんでしょうね。私は助かるわー。ただ、あの子の女子力が上がりすぎてモテないんじゃないかとちょっと心配してる。高校生になっても彼女の一人も出来ないみたいだし」
「ああ。……まあねぇ」
なんとも言いがたくて、私は曖昧に笑ってごまかした。
徒歩で行ける場所にあるスーパーで、ひき肉や玉ねぎ、チーズと付け合せ用の野菜を買い込む。
お母さんと二人で出かけるのも凄く久しぶりだ。
十九歳で家を出てから、私は思い出に触れるのが怖くて家族からも疎遠になっていた。
いつの間にかお母さんと同じ目線の話ができるようになっていたんだと改めて思う。
「智くんってお料理するの?」
「あんまりしないかな。でも出来ないわけじゃないよ。一人暮らしもしてたし。私が忙しい時は手伝ってくれる。
手伝うといえば、イラストの仕事がどうしても間に合わなくなりそうで、智に絵の具の色混ぜをお願いしたらすっごい色が出来上がっちゃって大変だったの。自分でやったほうが早かったよーって」
ふとお母さんをみたら、ニヤニヤと形容できそうな微笑みを浮かべて私を見ている。