夢のような恋だった
「……何?」
「ううん。紗優が幸せそうでよかったって思って。やっぱり智くんねぇ。まさか初恋の人と結婚するなんてびっくりだわ」
「……それは私も自分でびっくりしてるけど」
顔から火が出そう。
智とのことを冷やかされるのは恥ずかしい……まして、お父さんもお母さんも彼が小さい頃から知っているんだもの。
「安心して紗優を預けられるわ。ありがとうね」
「なんでお礼?」
「だって、選んだのは紗優だもの。私が、あなたを安心して預けられるような人を選んでくれたから、紗優にお礼を言うの」
「……そっ」
うわあ。
私、お礼を言うために帰ってきたのに、先に言われちゃったよ。
気恥ずかしいけど勇気を出して。
ホントは、お父さんも揃っているところで言いたかったのに。
「だったら、私をそんな風に育ててくれてありがとう」
顔が熱いや。
こうやって改まってお礼言うのって恥ずかしい。
お母さんは目を点にして私を見た。
「……あら、一本取られたわね」
「お父さんにも、お礼言わなきゃ」
「あー、それは難しいかも。多分逃げるわよ」
「どうして?」
「まだまだ面倒みる気でいるもの。手放したつもりなんてないと思うわ。紗優が思う以上に、あの人あなたのこと溺愛してるのよ」
「……それは」
ちょっと重い。
本人に言ったら落ち込みそうなことを私はこっそり思った。