夢のような恋だった
食事の途中だったのか、食卓には中途半端に中身の残ったお皿がいっぱいあった。
「あ、生姜焼きだ」
お父さんの好物。それとプルタブの空いたビール缶にお漬物。
団欒中だったのかな。
私の電話で邪魔しちゃったのかしら。
「やだ、お父さん飲酒運転した訳じゃないよね」
「してないよ。ちょうど飲もうとしたところで電話が鳴ったんだ」
「ホントかなぁ」
疑いの眼差しを向けているうちに、お母さんは私の分もご飯をよそってくれた。
「紗優も食べて行きなさいよ」
「うん」
お父さんの隣にお母さん。向かいに私とサイちゃん。
六年前には当たり前だった家族の団欒が、今はもう懐かしい。
白いごはんからはホカホカと湯気が上がっている。暑いのにお味噌汁もちゃんと作ってるや。
最近食生活が悪かったのでこれは素直に嬉しいかも。
「かーちゃん、おかわり」
「はいはい。豚みたいに食べるわね」
「豚って言うなよー!」
相変わらずサイちゃんは皆にからかわれてるんだな。
おかしい。
なんかこんなふうに笑うのって久しぶりだ。