夢のような恋だった


家に帰ったら、お味噌汁までサイちゃんが作ってくれていて。
私とお母さんはチーズハンバーグとサラダを作った。

久しぶりに四人で囲む食卓で、私とお父さんとお母さんはワインをあける。
サイちゃんはやっぱり一人ふてくされて、「なんで俺だけお子様シャンパンなわけ?」とゴネていた。


「諦めろ、未成年」


なんて、お父さんに言われちゃって。
不貞腐れたままご飯を食べてた。


そして寝る前、ベランダで煙草を吸うお父さんの背中を見つけて、私は窓を開けた。


「お父さん」

「紗優。どうした?」

「少し酔ったから、酔いざまし」


隣に立つと相変わらずの煙草の香り。
でも、私がいるからか、この家に住み始めてからはずっとベランダで吸ってくれている。

お父さんは私に煙を向けないためか、体を斜めにして背中を向けた。


「お父さん、あのね。……今までありが……」

「ストップ」

「え、でも」

「挨拶ならいらない。紗優は俺の娘だし。面倒見るのはこれからも変わらない」


お父さんは外のほうを向いて、煙を吐き出した。
ふわり、白い煙が空に浮かんで消えていく。


「でもほら、一区切りというかね」

「俺は血がつながってないから、区切られると終わってしまう気がして嫌なんだ」


背中を向けたまま、そういうお父さんが少しだけ小さく見える。
私はお父さんの背中に抱きついた。

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