夢のような恋だった


「今までありがとう。これからもよろしくお願いします。……これならいいでしょ?」

「紗優」

「お父さんがお父さんになってくれて嬉しかった」

「……俺も、紗優が娘になってくれて楽しかったよ」

「うん」


いつも頼もしいお父さんの声が潤んでる。

昔、サイちゃんが生まれた時も泣いたよね。
大人の男の人が泣くのにものすごくびっくりしたからよく覚えている。

私達だけの内緒の約束。

今日のことも追加にしなきゃね。







昔私が使っていた部屋にはベッドがないので、今日の私は和室にお泊り。

夏とはいえ、外に出ていたら足先が冷えてしまった。

智が居たら温かいのに、なんて、思い出すのはやっぱり彼のこと。


今日は家族水入らずで過ごそうって言ったけど、私はやっぱり智の声が聞きたいよ。
私の一日の締めくくりにあなたの声がないと落ち着かない。


邪魔しちゃうかな、って心配になりつつ。
でももう11時だからちょっとくらいならいいかな。

そう思って、携帯電話を操作する。


呼び出し音を聞きながら、まずは何を言おうかを考えた。


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