夢のような恋だった
絶句する俺に、琉依は頬をふくらませてみせる。
「なによう。こういう時は適当に相槌打っておけばいいのに。お兄ちゃん、ホント駄目だね」
「そうよね。駄目よね」
「紗優ねえちゃんに愛想つかされないようにしないとねぇ」
……ウチの女どもは揃って悪魔だ。
やっぱり紗優が天使に見える。ああもう、早く紗優に会いたい。
「壱瑳も夕方には帰ってくるっていうから。久しぶりに全員揃うわね。なに食べようかしら。智、なんかリクエストないの?」
「食えるものならなんでもいい」
「ホント張り合いないわぁ、男ってこれだからつまんない。琉依は? 何食べたい?」
「えっとねー。ステーキがいい。肉! 肉!」
「ステーキは明日でるぞ。披露宴の時」
「えー。じゃあすき焼き!」
この肉食女子め。
ガツガツ食ってると太るぞ。
「おっけ。じゃあ、買い物行きましょ。琉依、着いてらっしゃい」
「ラジャ!」
そして、女性陣は慌ただしく家を出て行く。
再び取り残される父さんと俺。
人数比でいけば同じだったはずなのに、存在感はあっちのほうが二倍以上あったのか、室内が妙に静かになる。
「……ま、これに慣れたら、他の女じゃ物足りなくなるってことだよ」
「すげー説得力ある」
親父の一言に、俺は頷くばかりだった。