夢のような恋だった
*
そして夜、帰ってきた壱瑳は俺の周りで漫画を読む。
「男ってホント動かないよねー」
キッチンから聞こえてくるのは琉依のボヤキ。
いやでも、久々に実家に帰ってきたら普通何もしないだろ。
甘えに帰ってきてんだよ、こっちは。
とは言え、せっかく帰ってきたんだし、礼の一つも言うべきなのか。
あーでも、恥ずかしいな。
この家族を前にかしこまって頭を下げるとか絶対にやりたくない。
やがて、出来上がったすき焼きを囲み、ガツガツ食いまくる琉依と壱瑳を見て何故か俺が胃もたれする。
時折、母さんの箸が二人の箸を蹴散らすように動き、父さんがビールを飲みながら笑う。
「ほら、智も飲め」
「んー、ありがと」
「子供と酒が飲めるってのはいいもんだな」
「そう?」
「ああ。これも一つの親孝行だろ」
こんな親孝行でいいならいつでもするけど。
「やぁね、卓。死期の近い老人みたいにささやかなこと言わないのよ。これからもっと沢山親孝行してもらわなきゃでしょ」
父さんの背中をバンと叩いて、ビールの入ったグラスを空にする母さんを見て、俺は密かに血の気が引いた。
そして夜、帰ってきた壱瑳は俺の周りで漫画を読む。
「男ってホント動かないよねー」
キッチンから聞こえてくるのは琉依のボヤキ。
いやでも、久々に実家に帰ってきたら普通何もしないだろ。
甘えに帰ってきてんだよ、こっちは。
とは言え、せっかく帰ってきたんだし、礼の一つも言うべきなのか。
あーでも、恥ずかしいな。
この家族を前にかしこまって頭を下げるとか絶対にやりたくない。
やがて、出来上がったすき焼きを囲み、ガツガツ食いまくる琉依と壱瑳を見て何故か俺が胃もたれする。
時折、母さんの箸が二人の箸を蹴散らすように動き、父さんがビールを飲みながら笑う。
「ほら、智も飲め」
「んー、ありがと」
「子供と酒が飲めるってのはいいもんだな」
「そう?」
「ああ。これも一つの親孝行だろ」
こんな親孝行でいいならいつでもするけど。
「やぁね、卓。死期の近い老人みたいにささやかなこと言わないのよ。これからもっと沢山親孝行してもらわなきゃでしょ」
父さんの背中をバンと叩いて、ビールの入ったグラスを空にする母さんを見て、俺は密かに血の気が引いた。