夢のような恋だった
食事中、サイちゃんはほっぺにご飯粒をつけながら楽しそうに話す。
「そういやねーちゃん、誕生日おめでと。過ぎちゃったけどな」
「プレゼント奥に置いてあるから持って帰りなさいね」
「うん。ありがと」
「ところでどう? 仕事」
珍しくお母さんが多弁でお父さんが静かだ。
ご飯を進めながらチラチラと視線だけを感じる。
観察されているようで落ち着かない。
「仕事は……今度絵本を一冊出せることになってる」
「凄いじゃない、三冊目ね?」
「うん。見本紙が来たらあげるね」
「いいよ、買うから」
そこでお父さんが口を挟んだ。
サイちゃんとお母さんは顔を見合わせて笑う。
「そうね。お父さんが十冊くらい買ってくれるわよ。会社でまで配ってるんでしょう」
「会社関係は達雄だけだよ」
懐かしい名前が出てきて、無意識に顔が緩んだ。
達雄おじさんはお父さんの同僚ですごく仲がいいらしい。かわいい感じの奥さんと、二人の子供を連れてよく遊びに来てくれた。確か、上の息子さんがサイちゃんと同い年じゃなかったっけ。