夢のような恋だった
「バカで結構。お前を嫁に欲しいなんて言うんだから、バカでなんぼだろう」
「私はまだまだ仕事したいわ。良い嫁になんかなれないわよ」
「すればいいじゃん。良い嫁が欲しいわけじゃない」
颯くんはすっと息を吸って、辺りを見回す。
私達の誰もが、彼の眼差しに吸い寄せられたように身を乗り出した。
そして彼は悠々と勝利の笑みを浮かべた。
「こんなに綺麗な女性がいる中で、結婚できるのはたった一人なんだぜ? 人生でたった一人を選べって言われたら、俺は明菜がいい。明菜が欲しいんだよ」
「……この天然タラシっ」
新見さんは悔しそうに、彼の手をとった。
でも内心は嬉しいんだろうな。瞳が潤んでいる。
きゃーっと最初に叫んだのは珠子ちゃん。
その後チラホラと拍手が沸き起こる。
私は感激して、力一杯手を叩いた。
「……完全に主役を奪われたな」
私の隣でポソリと言うのは智。
「うん。さすが颯くんだよね。格好いい」
私がいつまでも手を叩き続けていると、彼の手が片手をとって握りしめる。
恋人つなぎをされて、意識が一気に智に向かった。
「紗優も、颯のほうが格好いいと思う?」
拗ねたように言う彼に、私は笑って力を込める。
「何言ってるの。私はもう智を選んでいるでしょう?」
私達の誓いも、ちゃんと有効だから大丈夫。
だからこれからも一緒に、幸せになりましょう。
【Fin.】