夢のような恋だった
「そうね。汚いわね。……でも、その時はそれでいいって思ってたの。
達雄は報われない恋をしていて。私は優を忘れたくなかった。お互い、割りきって付き合えるって」
「パパが好きだったのなら、一人で居ればよかったじゃない」
責めるように告げると、お母さんは一瞬怯み、そして苦笑した。
「ホントね。……やっぱりどんな言葉で言ったって汚いわね。でも、寂しかったのよ」
お母さんの自虐的な態度は、逆に私の胸を刺した。
偉そうにそんなこと言っておいて、私だって似たようなことをしてる。
草太くんと付き合った一番の理由は、寂しかったからに他ならない。
「大人になればなるほど、気持ちだけで恋をするのは難しいんだって思ったわ。
優がどれほど好きでも、体が乾いて苦しくなる。抱きしめてくれる体が欲しくなったの。
……私は女を捨てきれなかった」
「お母さん」
「……だから、私はちっとも綺麗なんかじゃないのよ。紗優の方がちゃんとしてる」
それでも、お母さんはお父さんに出会えたんだ。
お父さんはどうしてお母さんを好きになれたの?
達雄おじさんの恋人だったのに。
汚いって思わなかったの?