夢のような恋だった

真っ暗になった和室で、私はようやく顔をだす。
そして、パパの仏壇を開け、ろうそくに火をつけた。


「……パパはママの裏切りをどう思う?」


写真のパパの表情は変わらない。

今までは何とも思ったこと無かったけれど、答えが欲しい時に反応の無い相手にしか問いかけられないというのはかなり切ない。

お母さんは、何度こんなふうにパパに話しかけたんだろう。


笑ってないで答えてよ。

好きな人がいるのに、他の誰かに抱かれるとか裏切りじゃない。
私には理解できない。……ううん。理解したくないんだよ。

私は綺麗でいたかった。
綺麗な恋がしていたかった。

でも今、私が草太くんに感じているこの曖昧な感情は、どう考えればいいのだろう。

草太くんは好きだけど。
彼じゃなきゃダメなのかと言われたらそんなことはない。
別れるなら別れるで構わないとそう思う。

自分自身が汚いものになっているようで胸が苦しかった。


「パパは……お母さんを許す?」


許せないと言って欲しいのか、許すと言って欲しいのか分からない。

私がどんなに不快に感じたところで、お母さんやお父さん、そして達雄おじさんとの間ではもう終わったことなのだろう。
決着がついていないのは私の心の中だけだ。


「……パパ。私の味方になってよ」


誰かに心に添って欲しくてそう言った。
やっぱりお母さんのことは責められない。私だってこうして誰かに助けを求めるんだもの。

人間って孤独に弱いものなんだって思った。


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