夢のような恋だった
たった一つの年齢差が、いつも私達を翻弄している気がする。
卒業とともに変わる生活を私達は上手くシフトすることが出来なかった。
毎日会えていた暮らしから、週末しか会えない暮らしに変わる。
智くんは私の日常に現れる知らない人の影をやたらに気にしていたし、私は上手に甘えることが出来なかった。
あまつさえ、智くんを上手に導くことさえ。
「……やっぱ、帰ろう」
家には智くんの思い出が多すぎる。
何年もかけてようやく薄らいできた気持ちが反復してくるのが怖い。
鍵をかけて家をでる。
懐かしい駅までの道も思い出が追いかけてくるみたいで落ち着かなくて、徒競走をするみたいな速度で走った。
息を切らしながら、昔「ボテボテ走り」と言われたことを思い出してまた苦しくなる。
もう戻れないのなら、記憶なんて無くしてしまえればいいのに。