夢のような恋だった
「しないよ」
はっきりした声に安心した自分がいる。
迷いを捨てて彼に寄りかかるほうが、生き方としては多分楽だ。
……お母さんもこんな気持ちだった?
汚いと思ったはずなのに、私は草太くんを許そうと思った。
お父さんもそう出来たなら、私にだってできるはずだ。
誘われるまま一緒に食事に行き、彼の楽しい話に笑いながら、どうしても消せない疑心に必死に蓋をした。
「今日泊まっていっていい?」
「……うん」
草太くんの手が、私の頬に触れる。
唇を指でなぞられ、鎖骨にキスが落ちる。
一瞬頭をかすめた、草太くんと私の知らない梨絵ちゃんという女の子を、目をつぶって打ち消した。
誰かに抱かれるのに、希望と絶望を同時に感じる事があるなんて初めて知った。