夢のような恋だった

 翌日、夜にやってきたのは草太くんだ。

いつものようにコンビニ袋を抱えてきた彼は、それをテーブルの上に置き、いつものように飲み始めることはなく何故か仕事机にいる私の方へ来た。


「紗優、昨日何があった?」

「何がって何が?」


質問に質問で返すと、草太くんは渋い顔をする。


「茂と会った?」

「会った。偶然ね。送ってくれるって言ったけど、タクシーで帰るからって断ったよ」

「その時泣いてた?」


茂くんからそのままストレートに話が通じているんだろうか。
彼ら二人の関係はどこか歪んでいるから計りにくい。

私はイラストを描いていた手を止めて、彼に向き直った。


「……何が言いたいの」

「だから。茂になんかされて泣いてたのか? それともその前に何かあった? 本当に仕事の顔合わせだったのかよ」

「どうして疑うの。飲み会も兼ねた顔合わせだったの。ちょっと飲み過ぎちゃったら涙腺が緩くなっただけ」

「だからって理由がなきゃ泣かないだろ」


机に手が置かれて、もう片方の手が私の顎を持ち上げる。
近づいてくる彼に嫌悪感が湧き上がって身を捩って逃げた。


「やだ。離して」

「紗優がちゃんと話さないからだろ?」

< 61 / 306 >

この作品をシェア

pagetop