夢のような恋だった
「何が仕事だよ。チャラチャラお絵かきなんかしてよ」
「チャラチャラじゃないわ」
「大事な話、片手間でする奴のどこがチャラチャラじゃないんだよ」
それには一理ある。
でも、私には私なりの理由がある。
真正面に向き合って、泣かない自信は無かった。
「じゃあちゃんと言う。別れましょ。……それとも、最初から付き合ってなんか無かった?」
声が潤む。指先が震える。
こんな姿を見せたくなかったから、そっぽを向いていたのに。
嫌なところもあったけど、好きなところがあったから一緒にいた。
沈んでいた私を励ましてくれる朗らかで明るい草太くんが光のように思えた時だってある。
でも私は、裏切りまで許容できるほど鷹揚じゃない。
「……泣いてるじゃないか。俺は、紗優が好きだよ。落ち着いて考えなおせよ」
草太くんの指が私の目尻を拭う。
やめて欲しい、こんなふうに優しくするのは。
「悲しくても別れたい」
「もう浮気はしない。誓うから、紗優」
「信じられないの。一度でも浮気する人はきっとずっとする。……とにかく帰って。今日は仕事もあるのよ」