夢のような恋だった
三人から責められて、草太くんは少したじろいだようだ。
智くんの手を振り払うと、一歩後ずさって私を睨む。
「また連絡する。紗優、よく考えろよ」
「考えなんて決まってる」
「とにかく連絡するから」
そう言って、草太くんが背中を向けた。
彼の視線から外れて、緊張が解ける。
膝から崩れそうになった私をサイちゃんが支えてくれた。
「紗優ねえちゃん、大丈夫? まさかあんなのが彼氏なの?」
眉を寄せて覗きこんでくる琉依ちゃん。
それよりも何よりも、今この場に智くんが居ることに体が硬直する。
どうしよう。
弟達の前で、醜態なんか晒せないけど。
ここでも智くんに無視されたらそれこそ立ち直れない。
「お兄ちゃん、あんな奴メタメタにしてやればよかったのに!」
「バカ。俺はそんなに喧嘩強くない。今も結構ビビってたし」
低い声が近寄ってくる。
喉が震える。
声が出せない。
拒絶されるのが怖い。
なのに顔が見たくてたまらない。
足の震えに、サイちゃんが気づいたのか、私を支える肩に載せられた手に力が入る。
「大丈夫、ねーちゃん」
「う、うん」
「痛そう、ね、お兄ちゃん」
琉依ちゃーん!
いきなり智くんに話をふられて、私はもうパニック状態になった。
一歩近づいた智くんが、笑うでも怒るでもない表情で私を見る。