夢のような恋だった
「……って、彩治が言うから。無理矢理でもお兄ちゃんと会わせてみようって。彩治とはここで待ち合わせて」
「余計なお世話だとは思ってたけどさ。……なんか馬鹿らしーじゃん。いつまでも終わったことに拘ってるのはさ」
だからサイちゃんは、こんなふうに琉依ちゃんとも出かけられるの?
傷つくのなんて恐れないで、報われなくても傍にいられるの?
八つも年下の弟は私よりはるかに強い。
「……っふ、えっ」
あまりの情けなさに、子供みたいな泣き声が出た。
「わあ、どうしよう。彩治」
「スッキリするまで泣かせたらいいんだよ。琉依、なんかジュース買ってきて」
「ラジャ!」
琉依ちゃんが飛び跳ねるようにしてコンビニに向かい、サイちゃんは私を群衆から隠すように引っ張る。
「ねーちゃん、こっち。もうちょっと人目のないトコに行こうな」
サイちゃんの優しい声に、どんどん胸の奥から我慢していた気持ちがせり上がってくる。
好きだった。
智くんが好きだった。
一番大事なのは、ただそれだけだったのに。
「うっ、あああん」
別れてから、六年。
初めて心の奥底を暴くように激しく泣いた。
その間、サイちゃんも琉依ちゃんも嫌な顔せずずっと傍にいてくれて。
最後に差し出された甘いミルクティーを、握りしめる。
「ありがとう。……二人共」
強くなりたいと思った。
サイちゃんみたいに。
傷ついた事さえ笑い飛ばせるように強くなりたい。