ジャスミン
何も考えないように無心で仕事をする。気がつけば、周りには誰もいなくなっていた。

『帰ろうかな…。』

茉莉は帰り支度を終えると、ビルの外に出る。冬も近付くこの頃、冷たい夜風に気分は更に落ちていく。

♪~♪~♪~

携帯を確認すると、「佐伯部長」


一気に背筋に冷たいものを感じる。

茉莉は出ることなく、鞄へと戻す。切れては何度も流れるメロディーに恐怖感は積もっていく。


♪~♪~『もうっ止めてっ!』

再び流れるメロディーに勢いよく出た。


『…茉莉?』

耳に届く声にハッとする。

『颯太郎さん?』

『そうだよ。いったいどうした?』

『えっ…あ、あの勧誘の電話が凄くて、それでつい…ごめんなさい。』

『…。』

『そうか。今、帰りか?』

『あ、うん。颯太郎さんは?』

『もう少しで終わるかな。』

『そうなんだ…頑張ってね!じゃあ、邪魔しちゃいけないから…おやすみなさい。』

ピッ。
これ以上嘘をついていることに罪悪感でいっぱいになり、早々に電話を終えた。
< 130 / 348 >

この作品をシェア

pagetop