ジャスミン
『あの…さ、今まで京子さんとは、その…何もなかったの?』

『俺とってこと?ないないっ!あいつはずっと幸太郎一筋だったからな。俺自身も、物心ついた時から家族みたいなもんだって思ってたしな。』

『そっかぁ。』

『なに?本当に妬いてたのか?』

お店での雰囲気に引っ掛かるものを感じていただけに、ほっとした。

その顔を見逃す訳もなく、颯太郎がすかさず核心をつく。


『んも~!そういう事は気づいても口にしないのっ!』

頬を膨らませながら、恥ずかしさを隠すように顔を景色に向ける。

『そうか。茉莉に妬いてもらえるなんて京子もたまには役に立つんだな。』

恐ろしく失礼なことを口にしたような気がするが、ちらっと横目で見える颯太郎の嬉しそうな表情に京子さんには申し訳ないが、見逃すことにした。


颯太郎が真っ直ぐに山々を見つめながら穏やかな声で話し出した。

『前も話したけど、周りに必要以上に人を寄せ付けないようにしてたから、人の気持ちっていうのに結構鈍くてさー…でも茉莉のことはどんなことでも知りたいし、俺のことも知って欲しいって思う。まだ出会ってから短い期間だけど、こんな気持ち初めてなんだよ。』
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