ジャスミン
自動ドアをくぐり抜けると、受付前のロビーで携帯を弄りながら座る部長の姿にホッとする。

『部長、お待たせしました。』

『ん?あぁ、お疲れ。よし、行くか。』

先頭を歩く部長の背中を見ながら歩いていると、何かを思い出したかのように振り返る。

『そうだ、倉田。これから会う人に腰抜かすなよ?』

意地悪気に口角をあげながら、話す部長に対し茉莉は眉間に眉を寄せて「は?意味不明なんですけど?」という表情。

そんな茉莉を気にすることもなく、何だかご機嫌な様子で歩く部長。

西川に至ってはそんな二人を訝しげな表情で見比べるのだった。


目的の階まで上昇するガラス張りのエレベーターに居心地悪さを感じつつ、向かった先は企画会議室とプレートがかかる場所。

部長は軽くノックをすると、扉を開けた。

『お待たせしました。…先日はどうも。』

部長がすでに言葉を発しているので、続いて茉莉も入ると『失礼します。』と室内に居るであろう人物に頭を下げる。

茉莉の視界には、よく手入れされているであろう黒光りの革靴が映る。

下から顔を上げつつ、相手の姿を映し出す。
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